高血圧の人は肉を控えた方がいい?
とんでもない! 肉は良質のタンパク質源で血管を丈夫にし、体にたまった余分なナトリウムを排除します。むしろ高血圧の人に肉はおすすめの食品なのです。
京都大学大学院教授の家森幸男先生が島根医科大学のボランティアにより行った実験を見てみましょう(図2)。実験は食塩と動物性タンパク質の血圧に対する影響を見るため、高血圧の遺伝的素因のある人とない人に分けて行われました。
図2
素因(+)は遺伝的に高血圧の素因を持つ群(祖父母4人のうち3人が高血圧)、素因(−)は高血圧の素因が少ない群。
高血圧の素因のある人は高塩分(26g)に敏感に反応し血圧を上昇させます。しかし素因があっても減塩(6g)するとまた元に戻るので、たとえ遺伝素因があったとしても、減塩することが大切なことがわかります。さらに高塩分と同時に高タンパク食を摂取すれば、血圧は上昇しません。このことから高血圧の素因があっても、動物性タンパク質を十分摂れば高血圧を予防できるといえるでしょう。
家森先生らは、生まれながらに100%脳卒中を自然発症するラット(脳卒中易発症ラット・SHRSP)を4群に分けて違った餌を与える実験も行いました(図3)。
図3
脳卒中易発症ラット(SHRSP)を餌により4 群に分けた実験。A群(低タンパク食のみ)は80%が通常より早く脳卒中を発症。B群(低タンパク食+食塩水)は100%が脳卒中を発症して死亡。C群(高タンパク食+食塩水)は脳卒中発症率は10%に激減。D群(高タンパク食のみ)は脳卒中の発症率が皆無。
タンパク質が少なく高塩分の餌で育てた脳卒中ラットは、短期間で重症の高血圧になり100%が脳卒中で死んでしまいます。けれども十分な動物性タンパク質と塩分を与えた群は、10%が脳卒中を起こすに止まります。さらに高タンパク質の餌だけで育てた群は、重症な高血圧にならず、脳卒中の発症もまったく見ずに長生きしました。このことからも、動物性タンパク質を十分に摂れば脳卒中が防げることがわかります。
血管を丈夫にし、高血圧が誘因となる脳卒中を防ぐためにもタンパク質は重要です。高血圧の人こそ、たっぷり肉を食べてほしいものです。