![]() | 令和6年度供給リスク増大下の食肉事情等理解醸成事業【食肉家計消費等動向分析報告書】 |
[2025-03-25] | |
世界的な食料需要の増大、ウクライナ情勢等によって食料の供給リスクが増大している中、我が国畜産業は飼料価格の高騰等により経営的に厳しい状況に置かれています。こうした中、我が国の畜産業の現状を一般消費者に認識していただくとともに、食肉の適正な価格形成についての理解を醸成することを目的として「供給リスク増大下の食肉事情等理解醸成事業」を実施しましたが、同事業の一環として行った「消費者意識調査(WEB調査)」と「食肉家計消費等動向分析」の結果を以下の2種類の報告書に取りまとめています。 @消費者意識調査報告書 一般消費者を対象として、食肉価格の上昇が常態化しつつある中での食肉購入行動の変化、価格上昇許容度、畜産業の現状や食料・食肉の供給リスクについての認識度、生産コスト上昇分の価格転嫁に対する意識等を把握 A食肉家計消費等動向分析報告書 家計調査を主な分析対象としつつ食品スーパーのID-POSデータ等も活用して、食肉価格の上昇とその常態化による消費者の食肉購買の変化をコロナ禍以前の2019年からの中期的な食肉消費動向の中で把握 調査結果のポイント【食肉家計消費等動向分析報告書】 (1)家計支出の動向 ●約30年間横ばいで推移していた物価は2022年から大きく上昇し、それに伴い家計での消費支出も増加。消費支出のうち最大の割合(直近1年間29.9%)を占める食料費も2019年比では増加しているものの、その間の消費者物価指数(CPI)の伸びを下回っており、節約志向がうかがえる。 なお、実収入が他の年代以上の伸び率となっている20代は消費意欲が旺盛で、食料費をはじめ様々な費目で支出金額が増加。 ●内食・中食・外食別では、内食への支出はコロナ禍での巣ごもり需要により増加した後減少傾向で推移していたが、物価上昇の影響により2022年後半以降は増加傾向で推移。一方、コロナ禍で大幅に減少した外食もコロナ禍前の2019年を上回る水準まで回復。そうした中、中食は2019年以降一貫して増加。 年代別では、20代が内食・外食ともに支出を大きく伸張。地域別では、北海道や東海、四国で外食への支出は減少/横ばいである一方、内食への支出が増加しており、これら地域での外食から内食への需要シフトを示唆。 ●内食支出では、穀類以外は購入頻度が2019年比でいずれも減少している中で、肉類は比較的購入頻度の減少が少なく、もっとも減少したのは魚介類。 年代別では、20代は肉類をはじめ多くの食材への内食支出が他の年代以上に大きく増加。地域別では、北海道では肉類と乳卵類、四国では魚介類への支出が増加する等、地域ごとに異なる消費傾向が見られた。 (2)食肉の消費動向 ●生鮮肉と加工肉の支出金額の比率は8:2(直近1年間)。コロナ禍の巣ごもり需要で一時的に増加し、その後減少傾向であった生鮮肉の支出金額は、最近はコロナ禍の時期に匹敵する水準に回復。しかし、2023年中頃からは支出金額の伸びがCPIの伸びを下回っており、節約傾向が見られる。 生鮮肉への支出金額(直近1年間)は40〜50代が最多で20代が最少であるものの、2019年比では20代が他の年代以上に増加。支出金額は西日本で多い傾向であり、そうした中、北海道の支出金額は全国平均より少ないものの、2019年比では他の地域より突出して増加。 ●牛肉は生鮮肉支出金額の26.5%(直近1年間)を占めている。支出金額は2021年中頃からの価格上昇の影響で2019年並みを維持しているものの、購入数量や購入頻度は減少。特に輸入牛肉のCPIは、2021年後半から国産牛肉以上に大きく上昇しており、食品スーパーでは国産牛肉以上に輸入牛肉の売上金額が減少。 また、高齢層ほど支出金額や購入頻度が多く、平均価格(100g単価)も高齢層ほど高くて20代と70代とでは約2倍の差。2019年比では、ほとんどの年代で購入数量が減少する中、20代は増加しており、20代の牛肉消費の好調がうかがえる。支出金額は西日本が多く、最も多い近畿と最も少ない北海道では3倍以上の差があるが、2019年比で増加したのは北海道、北陸、東海。 ●豚肉は生鮮肉支出金額の42.0%(直近1年間)を占めている。生鮮肉の中で最も支出金額が多く、購入数量と購入頻度は緩やかに減少しているが、依然として底堅い需要を維持。ただ、輸入豚肉の価格は2022年初めから上昇が続いており、食品スーパーの輸入豚肉の売上金額は2023年末頃から2019年を下回って推移。 また、40〜50代の支出金額と購入数量が多く、2019年比の伸びも大きい。特に50代の購入数量の増加が顕著。平均価格(100g単価)は高齢層ほど高いものの、20代と70代の差は1.3倍と牛肉ほど大きくない。東日本での需要が強く、2019年比での支出金額も北海道をはじめとする東日本が西日本以上に増加。そうした中、九州は支出金額、購入頻度ともに顕著に伸張。 ●鶏肉は生鮮肉支出金額の23.6%(直近1年間)を占めている。2019年以降、支出金額だけでなく、購入数量、購入頻度も増加。2022年後半からCPIが大きく上昇しているが、支出金額はCPIを上回って推移しており、価格の上昇はあったものの、消費は堅調。 また、40〜50代の支出金額と購入頻度が多く、2019年と比べても他の世代以上に増加。年代による平均価格(100g単価)の差は1.1倍と小さいものの、2019年比での増加幅の年代による差は他の食肉以上に大きい。九州をはじめとする西日本での支出金額が大きいが、2019年比では北海道と沖縄の伸びが顕著。 ●牛肉・豚肉・鶏肉・合いびき肉について比較すると、牛肉は価格上昇の影響で支出金額こそ2019年比でプラスを維持しているが、購入数量は減少しており、買い控えの傾向。支出金額は増加傾向の豚肉も購入数量は2021年以降緩やかな減少傾向。鶏肉と合いびき肉は支出金額・購入数量ともにここ1年ほど大きく増加。 2019年比では、牛肉は20代、豚肉・鶏肉は40〜50代の支出金額が増加。 牛肉は近畿、豚肉は東日本、鶏肉は九州という地域的な差異は依然として見られるが、2019年比では、肉類の消費が弱かった北海道で支出金額が増加し、九州 で豚肉の支出金額が増加する等地域ごとの食肉消費に変化が生じている。 ![]() |