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かたい肉を長時間煮込めば煮込むほどやわらかくなるのはなぜでしょう。調理科学の観点から探ってみましょう。


■コラーゲンがゼラチン化することで肉はやわらかくなる
かたい肉を長く煮込むと、やわらかな味わいが生まれます。これはコラーゲンのゼラチン化が大きく影響しています。
コラーゲンは、かたい線維状のたんぱく質で、主に、骨や軟骨、腱、皮などの結合組織(細胞と細胞の間を埋めている組織)に存在し、細胞間の接着剤としての役割を果たしています。
一般に肉のコラーゲンは約65℃で収縮を始めかたくなりますが、75〜85℃で軟化し始めます(ゼラチン化)。 軟化は、3本の糸がらせん状に巻かれた縄のような形をしたコラーゲンの分子が、熱によってほぐれるために起こります。 熱が加わると分子間の結合が切れ、1本ずつばらばらになり、糸まりのような形に変性し、水に溶けやすいゼラチンになるのです(図1)。

図1  
出典:「食肉と健康に関するフォーラム」
委員会報告書(平成8年度)
東京農工大学農学部応用生命科学科
教授 藤本大三郎  より
その結果、結合組織の線維状の構造自体も弱まり、肉は、コラーゲンという接着剤がはがれた状態になるため、 ほぐれやすく、やわらかくなるわけです(グラフ1)。
 
グラフ1
肉の軟化に及ぼす加熱温度の影響
出典:「肉の科学」朝倉書店 沖谷明紘 編

■濃厚な味わいを楽しむには、骨・皮つき肉、すじが多い肉を
コラーゲンは、牛の場合、かた、ネック、すねに多く、また、テール(尾)にも豊富に含まれています。 豚では、骨つきのスペアリブに多く含まれています。トンソク(足)にもコラーゲンやエラスチンなどのたんぱく質が多く含まれ、長時間煮るとやわらかくなります。 鶏は、手羽さきにゼラチン質が多く含まれていますし、ももなどの骨・皮つきのぶつ切り肉を煮込んでもよいでしょう。
また、コラーゲンはゼラチンとなって煮汁に溶出しやすいので、煮汁ごと楽しめる料理にするとよいでしょう。
このように、肉などに豊富に含まれているコラーゲンは、人間の体内の全たんぱく質の1/3を占めている栄養素のひとつでもあります。 コラーゲンの多い食品を食べることは骨粗鬆症や関節炎に有効といわれ、また、毛髪や爪などの質的改善などにも影響を与えるといわれています。 さらに化粧水などによるコラーゲンの補給は皮膚の保水性を上昇させ、みずみずしい肌の実現に役立つと考えられます。

 
 

■煮込みによる肉の栄養成分の変化
肉を煮込むことで、たんぱく質や脂質などの栄養成分は変化するでしょうか。
肉に含まれているたんぱく質や脂質は、煮込んだり、ゆでたりすると、煮汁やゆで汁の中に溶け出します。 しかし、煮込みの場合、煮汁ごと食べる料理が多いので、煮汁も含んだ全量を分析していたため、あまり変化が見られません。

※いずれも乳用種去勢1検体のデータ
(当センターが実施した分析値より作成)

 







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